大判例

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東京高等裁判所 昭和63年(行コ)60号 判決

控訴人は、たばこが数ある嗜好品の中の一つに過ぎず今日その有害性が指摘されていることに鑑みれば、たばこについて消費者利便の確保を図ることは公共の福祉を実現することに当たらない旨主張するけれども、いやしくもたばこの専売制を採用する以上は、たばこの販売に当たり、右のような消費者利便の確保を図るべきことは当然であり、このことはたばこの性質等とは直接関係がないから、その主張は採用できない。

右のように、たばこ専売制は、国の財政収入を確保し、併せてたばこの消費者の利便を図るという社会的な政策を積極的に実現するためのものであるから、これに伴い、いかなる営業上の規制措置を講ずるかは、主としては立法政策の問題として、立法府の裁量に委ねられているものというべきである。したがって、かかる規制措置が違憲かどうかの判断をするに当たっては、第一義的には立法府の判断が尊重されるべきであり、当該規制措置が著しく不合理であることが明白である場合に限って、これを違憲としてその効力を否定すべきものと考えるのが相当である(最高裁判所昭和四七年一一月二二日大法廷判決・刑集二六巻九号五八六頁)。この点について控訴人の主張する判断基準は、営業の自由に対する制限が、当該営業行為により社会や他人に害悪を及ぼすのを未然に防止するための消極的、警察的措置である場合に関するもので、採用できない。

ところで、専売法二九条一、二項は、たばこの販売について小売人指定制を採用しているが、これは、地域におけるたばこの需要特性、既設小売人の取扱実績等を勘案して小売人を配置し、もって需給の円滑と市価の統制を図り、財政収入の増大と、消費者利便を図ることを目的とした必要かつ合理的な規制というべきである。控訴人は、自由販売に委ね、小売人を増やすことこそ、財政収入の確保と、消費者利便の確保につながるとして、小売人指定制を採る必要性はない旨主張するけれども、そのようにすれば、需要の多寡とは無関係に小売人が偏在し、流通経費の負担が増加するほか、乱売や買占めが行われ、市価の統制が不十分となる事態が生ずることも予想されるから、右主張は直ちに採用できない。≪中略≫

控訴人は、たばこによる財政収入は、全地域の需要の総和にかかるものであって、個々の小売人の売上げに左右されるものではないとして、たばこ小売人について、右のような欠格条件規定を置いたところで国の財政収入の確保につながるものではない旨主張するけれども、個々の小売人の売上げが減少すれば、それが品質の低下を招くであろうことは前記のとおりであり、それが全体としての売上げの低下につながることが予想されるから、控訴人の主張は理由がない。また、控訴人は、たばこ小売人の過当競争による弊害は小売人に対する供給の規制、品質管理の改善などの指導、監督によって防止しうる旨主張するけれども、前記のとおり、本件のような欠格条件規定を置かなければ、一定地域に過度に小売人が集中し、公社による効率的な指導、監督は困難となることが予想されるから、これが可能であることを前提とする控訴人の主張も理由がないものといわなければならない。≪中略≫

以上のとおり、専売法二九条一、二項、三一条一項三号、四号は、いずれもたばこ専売制の目的を達成するための必要かつ合理的な規制と認められ、もとより裁量権を逸脱したものとはいえないから、違憲ということはできない。

(千種 川波 近藤)

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